AVALONE 2016-17A/W – Mercedes-Benz FashionWeek Tokyo – Special Report



■ 今回のショー演出について
 
ファッションアワードを受賞してショーをやるっていうのが決まった時点で今回のインスタレーションの基本的な構想は頭の中にありました。オーケストラを起用したのは、クラシック音楽へのリスペクトと若い方達にももっとクラシックに親しんで欲しいなって思いもありました。
 
■ 選曲について
 
当初はオリジナル曲でやりたいと思ってたんですが、時間的に厳しいって事もあって今回協力して下さった『CTK』の方達とも話し合ってシューベルトの交響曲第7番「未完成」に決めました。この楽曲はキリスト教などから『悪魔の音』といわれ禁じられていた『トライトーン(※)』に近い音域が使われている事などもあり、僕の表現したい世界観にマッチしてると感じたからです。
(※ トライトーン : 全3音のインターバルで1オクターブの中間、独特の緊張を生み不安定感をあたえる)
 
■ 5(+1)体のルックと世界観
 
5体でいくって言った時にいろんな方から否定的な意見や心配の声を頂きました。でもこれは僕のカルチャーのバックボーンの一つである「※サタニズム(悪魔崇拝)」の象徴でもある「INVERTED FIVE(逆五芒星)」で表現したいってのが強くあったので譲りたくありませんでした。それにプラスしてAVALONEはユニセックスの展開ってのもあり、宇宙に近い存在と感じている女性を神に見立てちょっと儀式的な演出にしました。

(※サタニズム : 悪魔崇拝というとその語感から何か邪悪な物と誤解する人も多いと思うが、決してカルト宗教のような物ではなく、最大のサタニズム組織である『悪魔教会』によればいわば一つのイデオロギーであると定義されている)

■ 今回のコレクションのテーマ
 
”Disarmament(ディスアーマメント)”、武装解除っていうのをテーマにしています。
と言ってもその要素を直接服に落とし込んでいるってのは特にはなくて、全体的な意識の部分って事ですが。
昨年のパリでのテロに始まりここのところヨーロッパ各地でテロが相次いでますが、単純にテロ組織が全て悪いって事だけじゃなくそういった状況を生んでいる歪んだ社会の現状ってのもありますよね。例えば戦争の影でそれをビジネスにしてお金を儲けている人がいる。そんな社会に対する疑問やカウンター的な視点っていうのが根底にあります。
 
今シーズンは黒をベースに極力色を抑えたコレクションになっています。黒の持つイメージっていろいろあると思うんですが、以前あるジャーナリストが言ってた「黒は一番自由な色だ」っていうのが心に残っていて、その何物にもとらわれない自由さ、発言の自由や行動の自由ってのを黒という色に込めたつもりです。

■ パリの合同展の感想
 
一言で言えばすごく勉強になりました。もちろんビジネス的には全然まだまだなんですが、今後の方向性が見えた感じがしました。
 
以前別のブランドをやっていましたが、その時は今思えば日本のマーケットにどうしても引っ張られちゃった部分ってあって自分のやりたい事が出来ていなかったし、そもそも何がやりたいのかさえ見失っていた状態でした。
今回のパリでいろんな人と話してそういった事がかなりクリアに意識出来るようになったのは大きいと思います。
 
展示会に来てくれたバイヤーの方達の他に、自分でリサーチしてウチのブランドの方向性にあうと感じたショールームなどをアポとったり、または飛び込みでいろいろ廻ったんですね、英語もそんな得意じゃないのに。
そこでよく言われたのが、プライスが高いって事。海外では関税やら何やでどうしても日本より割高になってしまいますが、それをおいても、「君たちは日本の価値観に縛られている」って事を言われました。特にストリート・ブランドにおいて重要なのはクオリティー云々より、そのアイディアやユニークさだって。それを聞いてハッとしました。もちろんクオリティーをないがしろにするつもりは有りませんが、それよりももっと大事な事は他にあるってことです。「君たちのようなブランドは、もっとユーモアを大事にするべきだ」って言われて、何かが吹っ切れた感じがしました。


■ 日本と海外のユース・カルチャーとファッション
 
日本だと何かが流行ると皆いっせいにそれに飛びつく傾向がありますよね。和を重んじる国民性みたいのが現れているのかもしれないですけど。浮いちゃったり、孤立しちゃうのを極端に恐れるみたいな。もちろんそうじゃない人も沢山いますが。
それに比べると海外では、一人一人が自分と言うものをしっかり持ってる印象ってのを感じますよね。一部だけ見て思い込んでる部分はあるかも知れませんが、ストリートの若い人達見てるとそれぞれの個性がちゃんと見える。それは自分の意見をちゃんと持っているって事なのかなって思うんです。メディアがそう言ってるからとか、周りがこうだからとかで簡単に飛びつかない。
 
今ウチのブランドをフォローしてくれているのって海外の10代後半から20代前半の若い層が多いんですけど、基本的にそういった人達ってお金持ってないじゃないですか。だからってそういう人達を切り捨てるって事はしたくないし、逆にそういう人達にこそ一番着てもらいたい。例えば今迄はTシャツをありもののボディで作るのって自分の中じゃ有り得ないって思ってたんですが、今はそうする事でちょっとでもコストを下げてお金のあまり無い子達でも手を出しやすいロープライスのラインを作る事って大事なんじゃないかなって思い直しました。たとえプライスや製品のクオリティーが同じゾーンだとしても、ファスト・ファッションのような表面的に流行りを追ったモノとは全然違ったモノを提供出来ると思ってますし。


■ 今回のショーを通して改めて感じた事
 
やっぱりブランドの世界観をしっかりと見せていく事が一番重要って事ですね。
日本だとどうしても周りを気にしちゃう傾向って少なからずあると思うんですよ。でもそこで他人の意見とかに影響されて妥協していっちゃうとどんどん軸がブレていってしまう。周りっていうのは近い人達に限らず、業界とかジャーナリズムとかこれまでの因習とかを含めて。そういった空気が日本のファッション界に閉塞感のようなものを生んでいるんじゃないでしょうか。なんか新しいモノが出て来づらい印象を感じますよね。もちろんそんな中で頑張っている方々も居ますけど。でもそういった方々ってどんどん海外に出て行ってしまう状況が現実にあって。ファッション業界もそれが表してる本質に気付かない訳は無いとは思うんですけど、努力はしているんでしょうがなかなか変える事は難しいんでしょうね。
なので、例え「アイツ生意気だ」って思われてキツい状況になることがあったとしても、周りに流されるような事は絶対やっちゃだめかなって改めて思います。
 
あとジャーナリズムに関して付け加えるなら、ショーの後の囲み取材など含めいくつか取材を受けて感じた事ですが、ピントのずれた質問が多いなって思いました。ウチのブランドがまだ認知度が低いせいもあるんでしょうけど。なんか仕事に対する真剣味があまり感じられないっていうか、もちろん全員じゃありませんが。
僕は批判的な意見でも、それが納得できるしっかりした意見ならどんどんして頂たいって思っています。でも日本のメディアはあまり批判めいた事も書かないですよね。なんとなくお茶を濁してるっていうか。テクニカルな部分の解説とか多くて、それ誰が読みたいんだろうって思うんですけど。



■ 表現への意欲
 
今回大きな舞台でインスタレーションを発表させてもらって改めて思いました。表現する事、発信していく事って大事だなって。始めはショーをやる事に対してあまり乗り気では無かったんですが、いざやってみると以前やっていたバンドのライブで感じたような足元からじわじわってくる高揚感や感動を思い出しました。ショーをやるのはいろいろと大変な事も多いですが、うちのような規模のブランドだと金銭的にも厳しいし、でも定期的にやっていきたいなって今は考えています。実はもう次やってみたいイメージが頭の中にあって、まだ実現できるかどうかは分かりませんが良いものを見せれるよう頑張りたいと思います。

 
【AVALONE 2016-17A/W @HIKARIE】
Designer / Susumu Miura
Show Direction / Hiromu Shirasaka(SUN DESIGN)
Hair & Make-up / Jun Matsumoto(Tsuji management)
Support Stylist / COMASA
Orchestra / CTK
 
■ HP : http://mosaicoffice.com