森健人「SOMEWHERE YOU BELONG」 – M.I.U.で写真展開催 #interview


 

『soe(ソーイ)』の実験的セレクトショップ『M.I.U.』で、雑誌や広告などで活躍する気鋭のフォトグラファー森健人による写真展「SOMEWHERE YOU BELONG」が開催された。『M.I.U.』でのこのような催しは初の試み。

『soe』デザイナー伊藤壮一郎によれば、これからこういったアートやカルチャーに関連したギャラリー的な展示も積極的にやっていきたいとの事。その第一弾となるこの写真展を皮切りに、面白い見せ方を模索して行きたいと言う。その動機の一つとして、「もっと気軽にアートに触れて欲しい。」との想いが込められている。

 

森健人と伊藤壮一郎の出会いは、伊藤がコレクションの”LOOK”の撮影でフォトグラファーを探していたとき知人に紹介されたのがきっかけ。「生きる事に込められた強さのようなものを感じる。」と森健人の写真の印象を語る伊藤が直接オファーし今回の写真展の実現となった。

今回の「SOMEWHERE YOU BELONG」は、人と地域との関連性をテーマに、アメリカ西部を中心に出会った人々の日常を切り取ったものとなる。森健人とはどういう人物なのだろうか?写真展初日、展示の準備の合間に話を聞いた。

 

 

彼の母があるとき趣味で写真を始め、楽しそうにいろんな所へ撮影に出かけて行くのを見ていて写真に興味を持ったという森。初めて手にしたカ メラは、母親が写真の先生からの勧めで長く使えるものをと入手した『コ ンタックスST』を譲り受け、 それに標準レンズをつけて写真を撮り歩いた。

小さい頃からアメリカの文化や生活に興味があったという森。それには、アメリカに住んでいた叔母のもとへ幾度か訪れたことも大きい。幼い目に映ったアメリカは、さぞ強い印象を植え付けたのだろう。

バスケ、HIP HOP、スケボーなどに加え新しく写真という表現に出会った彼に、影響を受けた写真家はいるか聞くと、「当時中学生だった自分とほぼ同世代の少年を撮影していた 『ラリー・クラーク』」という答えが。さもありなんといった感じであるが、思えば2000年以降あたりに活動を始めた比較的若い世代の写真家達には、ラリー・クラークからの流れを感じる写真が多く見て取れる。自身の身近な被写体に目を向けた、親しさとちょっと引いてフラットに俯瞰して見たような感覚。

 

どんどん写真にのめり込んで行った彼は、憧れの地アメリカで本格的に写真を学ぶ事を決意する。ちなみに彼が通った『Academy of Art University』は、かの叔母の母校でもあるらしい。このへんには今回の写真展のテーマでもある”繋がり”といった物を感じざるを得ない。

日本人の写真家と西欧の写真家達とは、写真に対するアプローチの違いが見て取れるが、その辺の違いというものについて、「課題などで作品を持ち寄って、皆で批評したりするんですが、とにかくロジカル。それを見て、論理的に自分の作品を説明できないといけないと思った。」と語る。西欧主導のコンテンポラリーアートなどで一番重要なのはコンテキスト(文脈)だとよく言われるが、”あ・うん”の世界で育った日本人にはなかなか難しい問題である。

 

学校を卒業後も数年アメリカに滞在し、写真を撮っていた森。人と地域の結びつきに着目し、被写体を求めてアメリカ西部を中心に撮影を始める。場所は地図を見て面白そうな所にアタリをつけ赴く。狙いは独特な空気を帯びたエリア。歩いていると、目には見えない境界線で、明らかに空気感が変わるのを感じるという。中にはちょっと物騒な所もあるが、カメラを持っていることで得られるある種の特権のようなものを頼りに、それぞれの地域に根をはった人々の生活にそっと近づく。それぞれの人生を生きる人々のポートレートに映り込む地域との繋がり。それらはパーソナルな普遍性を帯びてくる。その後日本に戻ってからも折をみてこの撮影は継続中。

 

 

日本に戻った森は、仕事として写真を撮るようになる。初仕事となる現場では、あまりに機材が少ないので、担当者に「えっ、これだけなの?」という表情を浮かべられたという森だが、作家的に写真と向き合って来た彼に、自分の作品を撮る時と依頼された商業写真を撮るときの意識の違いや感覚のズレのようなものはあるのか訪ねると、意外にそれほど意識していないという答えが。

それには、以前より好きな写真家で商業写真でも独特の存在感を示す若木信吾の影響は大きいという。若木信吾主宰のワークショップにも参加したという森は、そこで何かを感じたのだろうか。

 

技術的には高い水準をもつといわれる日本の写真家だが、残念なことに世界的に認知されている写真家は少ない。それには、閉じたマーケットのせいもあるだろうし、撮影を依頼する側の問題や、オリジナリティーに対しての意識が希薄な写真家自身の問題もあるだろうが、森健人のようなこれまでとは違った動きを見せる新しい世代の写真家達に期待し、注目して行きたい。

 

■森健人 : http://www.kentomori.com
■M.I.U. : http://www.miu-tokyo.com