【東コレ 2016-17AW】 フォーカス part3 – 「ニュージェネレーション編」



 

「Don’t trust over thirty」という言葉があります。
この『30以上(大人)を信じるな』というフレーズ、私はなぜかボブ・ディランかジョン・レノンが言った言葉だと永らく思い込んでいましたが、元はヒッピー・ムーブメントのさなかに反体制運動の指導者「ジェリー・ルービン」が掲げたキーワードだとされています。
 
かつて大人になると言う事は、スーツに身を包み社会の歯車になると言う事でした。
必ずしもそれに抗ったという訳では無いのでしょうが、30歳を目前に控えた27歳という年齢でこの世から旅立ったロック・スター達がいます。ブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリンといった往年のミュージシャンから、近年では、カート・コバーンやエイミー・ワインハウス等々。そこには単なる偶然では済まされない何かを感じてしまいます。
 
音楽もファッションも新しいモノは若い世代によって作られて来ました。若さには、その未熟さも含め大きな可能性があります。しかしそのマインドを保ち続ける事は非常に強い意志と覚悟が要求されます。社会の中で生きていくには、嫌でも”大人”になるという事を受け入れざるを得ません。
 
また一方で、経験によって進化/深化していく職人的な世界もあります。
この世界においては、20代などまだまだひよっこだと言われたりします。『匠の技』ってヤツです。伝統工芸をはじめとするこの手の分野では、日本の美に対する思想が体現されている気がします。日本的な”和”を重んじる世界。

 
日本はある意味で全体主義的な意識のもと発展してきました。その側面で「出る杭は打たれる」という悪しき風習を植え付けました。それは教育に置いてもしかり。物事には全て”正解”が用意され、それ以外の答え(個性)は原則として間違いとされます。
”大人”が用意した答えにそぐわなければ、努力が足りないと叱られます。いつしか努力する事が目的になっているという不思議な状況も笑い話ではなかったりします。
 
世間一般ではよく「ゆとり教育」の弊害が言われています。実務的な現場では常識的にありえない事をしでかしたりして周りを困らせる事もある「ゆとり」ですが、全てが悪い事ばかりかと言うとそうでもない一面もあると思います。教育の影響だけでは無いでしょうが、一部に独特の個性を持った人達は確実に育っているのではないでしょうか。
 
ここで一つ問題は、そういった強い個性を持った人間を受け入れ育てられる美大や専門学校が日本にどの程度あるのかという事。そんな中で存在感を増している学校があります。デザイナー山縣良和が2008年に立ち上げた「coconogacco – ここのがっこう」です。
 

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■ c o c o n o g a c c o

 
「ここのがっこう」の特徴は、なんといっても現役のトップ・デザイナーから直々に学べるという事ではないでしょうか。他の学校でも特別講義として活躍中のデザイナーを招いたりと言う事はありますが、コースでレクチャーを受けれるというのは他には無いでしょう。
日本と海外のアートスクールの違いとしてよく聞くのが、技術面優先の日本に対して個性を伸ばす事に重点を置いた海外の指導方針の違いがあります。就職する為の勉強と、一人のアーティストとして自立を目指す違いです。
 
「ここのがっこう」では、セントラルセントマーチンズで学んだ「リトゥンアフターワーズ」の山縣 良和さんや、アントワープ王立芸術アカデミーのマスターコースを首席卒業した「MIKIO SAKABE」の坂部三樹郎さんを中心にファッションの本場のリアルな空気と共に本当に重要な事は何なのか、そもそもの”ファッション”って何?っていう所から向き合っています。それはマーケットに偏重した日本のファッション・シーンにおいてはアンチな姿勢とも言えるでしょう。
 
「ここのがっこう」で学んだデザイナー達の作る服は、今流行っているトレンド的なものとは無縁です。正直ぱっと見理解に苦しむようなものも多いです。日本のマーケットに受け入れられるのはハードルが高いようにも思えます。しかし海外の賞を受賞したりと着々と結果を出して来ているデザイナー達を見るとこれからが楽しみであると感じます。
 
そしてそれらは、山縣良和、坂部三樹郎、両氏が若手デザイナーの発表の場として2014年に立ち上げたプロジェクト「東京ニューエイジ」へと繋がって行きます。
 

■ TOKYO NEW AGE

 
新しい価値観を持った新世代のデザイナーを発掘し支援する事を目的として、クラウドファンディングなどで資金を調達し合同でのインスタレーションやランウェイを開催してきた「東京ニューエイジ」。2016S/Sからは東京コレクションの公式スケジュールでの発表となり、その注目度、認知度も高まって来ています。
 

 
今シーズンも5ブランドが合同でショーを行いましたが、それに先だって育ての親とも言える山縣良和さんの「writtenafterwards / written by」もショーを発表しました。
先頃亡くなった漫画家の水木しげる氏へのオマージュともとれる「ゲゲ」と題されたショーでは、妖怪をモチーフに圧巻の山縣ワールドが展開されました。表参道ヒルズのスペースオーでの外の大階段まで使ったボリュームのあるショーはとてもエンターテイメント性に溢れたものとなり、数々のルックからはデザイナー山縣さんの引き出しの多さが感じられました。愛嬌のある妖怪達からは現代社会に対するメッセージも読み取る事ができます。
 
社会の中での自分というスタンスに向き合い、自身のルーツを探りながら導かれるオリジナリティー。それはテキスタイルに対する強いこだわりにも感じられます。そしてそれら全てを含めてポップに表現するセンス。
一見、奇抜さに目がいきがちなコレクションだと思いますが、決してウケ狙いのチープな奇抜さなどではありません。そこからは、ただ売れ線だからという理由だけで服を量産し続ける事への強い批評性なども汲み取れるのではないでしょうか。彼の作りだすファッションは愛が溢れています。
 
■ written afterwards : http://www.writtenafterwards.com
 
 

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