愛と喧噪の東コレ2016SS 【感想・まとめ】


 


 

【 東コレのリーディング・ブランド 】

 

 
現在の東コレの顔といえば、まず第一に名前が浮かぶのは「FACETASM(ファセッタズム)」だろう。今シーズンはジョルジオ・アルマーニによる“若手デザイナー支援ブランド”に選出されミラノ・メンズで海外デビューも果たし、このことにより、東京ではウイメンズのみの発表となった。
デザイナー落合宏理の持ち味は、抜群のバランス感覚にあると思う。落合の代名詞ともいえるレイヤードのバランス、素材使いやパターン、カッティングによる巧妙なプロポーションのバランス、そしてモードとストリートの絶妙なバランス。今、東京的なストリートの解釈は世界でも注目度が高く、海外ブランドでも類似したアプローチが見受けられる。今後海外にもより力を入れていくという事だが、今シーズンのようにウイメンズだけでもいいので、東コレでの発表は続けて欲しいと思う。”トウキョウっぽさ”と言うキーワードで度々語られるブランドであり、本人もそれをアイデンティティの一つとしている部分も見受けられるので、今後も東京でその存在感を示して欲しい。
 

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一部で熱狂的なファンをも擁する「CHRISTIAN DADA(クリスチャン ダダ)」。ちなみにこちらも2015年からパリと東京でコレクションを発表している。先のパリで発表されたメンズは、若き日のマーロン・ブランドを彷彿とさせるワイルドなルックを披露したが、対する東京でのウイメンズコレクションは「恋人との日常」がコンセプトというロマンチックなもの。一日を通し刻々と変化する空をバックに女性の柔らかさを表現。
海外での評価も高いという「CHRISTIAN DADA」だが、「ダダラー」というらしい熱狂的なファンは海外にもいるんですかね?
 

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卓越した技術によって生み出される「yoshio kubo(ヨシオ クボ)」のコレクションは、その人気・実力ともに、毎回抜群の安定感を感じる。今回の「Vintage & Modern」をテーマに発表されたショーは、頭に巻いたストールや砂漠に沈む太陽を思わせる背景などによりどことなく中東をイメージさせるが、日常的な取り入れやすさを意識したという服自体は都会的でモダンな物。プリントが印象的なテキスタイルや、ひと捻り加えたディテールとパターンに「yoshio kubo」らしさが光る。
 

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【 HELLO,GOODBYE 】

 

 
東京メンズを牽引してきたブランド「FACTOTUM(ファクトタム)」が、今回のショーを最後に発表の場をパリに移すという。東京最後のショー会場に選んだのは、デザイナー有働の母校でもある東京モード学園のコクーンタワー50階展望室。自身の中で一旦区切りをつけるには最良の選択だったのではないだろうか。彼の今後の決意やこれまでの想いのような物をぼんやりと想像して、ちょっとセンチメンタルな気分になった。
昨シーズン「TOKYO FASHION AWARD」の受賞を受け選出された6ブランドでのパリでの展示会「showroom.tokyo」に参加したことで、ブランドの今後の課題や方向性が明確になったのだろう。綿密にリサーチを重ね作り上げたテーマを丁寧にリアル・クローズに落とし込んでいく服作りは、良くも悪くも生真面目さが滲み出ている。それが長所であるとともに弱点でもあると言う事は有働自身も気付いている筈。今後のパリで一皮むけた「FACTOTUM」の姿に期待したい。

 

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一方、2006年からミラノ・パリと海外での発表を行ってきた「MIHARAYASUHIRO(ミハラヤスヒロ)」が、久しぶりに東コレでランウェイ・ショーを行った。素材へのコダワリとデザイン性の高さで海外でも高い評価を確立し、最近では他ブランドのクリエイティブ・ディレクターに就任するなど活動の幅を広げている。今回、渋谷の交差点との二元中継のような斬新な演出を見せた三原は、「久しぶりの東京はやっぱり楽しい。」と感想を述べた。
今回のテーマ、ウイメンズが「新即物主義」、メンズが「ダダの芸術思想」からインスパイアされたというコレクションを発表したが、近年のファッションだけに留まらないアーティスティックなアプローチにも注目が集まる。
 
ちなみに同じく昨シーズン久々のカムバックで健在ぶりを見せた、日本ファッション界の重鎮、菊池武夫氏。そのショーに見た圧倒的なエネルギーは、改めて”ファッションは楽しいものなんだ”と思わせてくれ、またそれは若い世代への叱咤激励のようにも感じた。現在実力のある日本のブランドがその発表の舞台を海外に移すのも分かるが、たまには地元東京でもショーを行って東コレ全体を盛り上げてくれていったらいいのにな、などど勝手な事を思ったりもする。
 

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