愛と喧噪の東コレ2016SS 【感想・まとめ】


 

【 新勢力と支援プロジェクト 】

 

 
新世代のデザイナーといえば、やはりその名も「東京ニューエイジ」の合同ショーは外せないところ。このプロジェクトは、従来のモノサシでは測れない新感覚の若手を輩出するために坂部三樹郎と山縣良和が共同で立ち上げたもので、マーケットなどに囚われない自由な発想から生まれるクリエーションをサポートしようと言うもの。これは今のファッション業界があまりにもデータ・市場主義に傾倒していて、面白いものが生まれにくい状況に対する警鐘でもある。
毎回、合同ショーという形式で開催されており、今回も5組のブランドが発表を行った。いずれもまだほぼ無名といって良いブランドだが、その若い感覚や自由な発想にはハットするものがある。想像の斜め上にぶっ飛んでいるものなどが沢山あって見ているだけでも面白い。一見奇抜なようだが、見かたを変えれば海外のコンテンポラリーな感覚を持ったブランドとの共通点も見えたり、あるいは実用性のあるファッションというより、現代アートの文脈で見たほうがしっくりくるようなルックも多数見受ける。暗い状況の続いていたファッション界だが、明るい未来はもしかしたらすぐそこなのかも。
 

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D.TT.K

D.TT.K


sulvam

sulvam


 
2014年に創設された「TOKYO FASHION AWARD(トーキョーファッションアワード)」も、世界での活躍が期待されるブランドに向け、ビジネス面で支援をしていこうというプロジェクト。受賞者には、パリコレ期間中に開催される「showroom.tokyo(ショールーム・ドット・トーキョー)」への参加や東コレでのショーの開催のサポートが成される。
昨年の第一回受賞者で新勢力としては「D.TT.K」と「sulvam」がインスタレーションやショーを行った。
一勢力として確立された感のあるラグジュアリー・ストリートにカテゴライズされる「D.TT.K」は、首都高沿いに建つ青山のビルのテラスでプレゼンテーション形式の発表を行った。ショーに訪れたゲスト達が自由に写真を撮ってSNSで発信するという、今一つのパターンとして定着した感のある趣向。ランウェイより、こういったスタイルでの発表のほうがブランドの世界観にも合っていると言う事だろう。

一方の「sulvam」はオーソドックスにシンプルなショーを見せた。「軽さ」をテーマに今回初となるウイメンズも披露。ノー・ジェンダーな取り組みも。フリンジ使いが印象に残った。
 
インターネットの普及によって日本に居ながら海外への情報発信が可能になった今、海外から火が付くというケースも増えて行く事だろう。「TOKYO FASHION AWARD」は既にある程度のキャリアを積んだデザイナーが対象という事になるのだろうが、インディペンデントなブランドには飛躍の大きな後押しとなるに違いない。

 

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【 海外勢 】

 

 
今シーズンの東コレのオープニングを飾ったのは、NYから招待の「TODD SNYDER(トッド・スナイダー)」。先にNYで発表したコレクションにアレンジを加えたショーとなった。いかにもNYらしい、クリーンでモダンな上質な大人の服といった印象。それはどことなくツルンとした無機質さを感じた。それがNYらしさといえばそうなるが、正直ランウェイ・ショーで見る意義があるのかどうかは不明だ。もちろん個人の嗜好によるところも大きいだろうが。「TODD SNYDER」といえばシグニチャーコレクションがフルラインアップで揃う世界初の直営店を東京・渋谷にオープンするなど、日本との関係性も強いし、本人も日本には特別な感情を持っているのかも知れない。しかし、NYブランドでアメトラがベースでラルフ・ローレンの元で働いた経歴の持ち主という条件だったら「THOM BROWNE(トム・ブラウン)」が見たかったなとふと思った。ちょうど今シーズンのテーマは日本みたいだったし。まあ、色々と大人の事情があるのでしょう。(決して、トッド・スナイダーが嫌いという訳ではありません。)

 

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他に海外勢として、今シーズンはアジアから二つのグループ・ショーがお目見え。
ひとつは香港のファッション・デザイナー5名による「Fashion Hong Kong(ファッション・ホンコン)」。これは香港貿易発展局が立ち上げた海外プロモーション・イベントのプラットフォームだという。デザイナー達はそれぞれ「セント・マーチン」や「ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション」などで学んだり、ヨーロッパでキャリアを積んだりと華々しい経歴の持ち主で、実際ショーを見た感想は、平均して日本よりインターナショナルな正統派モードという感じを受けた。
 
もうひとつは、東南アジアから3ブランドが参加した「Asian Fashion Meets TOKYO(アジアンファッションミーツトーキョー)」。こちらは、東京っぽいというか、世界的傾向のストリート色の強いブランドや、ちょっとアバンギャルドなテイストのブランドが見られた。

単独開催のブランドとしては、東コレでもおなじみとなった、台北出身のデザイナー「Johan Ku(ヨハン・クー)」による「Johan Ku Gold Label(ヨハン・クー ゴールド レーベル)」が継続して東京でショーを開催している。
 
世界五大ファッション・ウィークの一つとして数えられる東コレとしては、アジアのハブとしての存在感を示したいという思惑もあるのだろう。日本は観光として訪れるには、とても良い所だと思う。今回ビジネスとして東京を訪れたアジアのブランドは期待どうりの成果を得る事が出来たのだろうか?

 

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【 雑感・まとめのまとめ 】

 
今は本当に便利な時代になったなと感じる。ライブ・ストリーミングでショーも見れるし、詳細なルックもすぐWEBで見る事が出来る。そしてSNSである。もはやファッション誌すら過去の物と化す勢いだ。聞く所によるとコーディネートアプリ「WEAR」経由での洋服の売り上げがとんでもない事になっているらしい。トップメゾンも「Instagram」をブランディングに活用する事はもはや常識となっている。パソコンを使えない新社会人が増えてきたという話を最近聞くが、ビジュアルメインのネイティブアプリに慣れた世代には、文字を追うことさえじれったいのかもしれない。ショー会場でも、自分の目ではなくスマホの画面越しにしか見ていないんじゃないかと感じる人が目に付いた。ショーをじっくりと見るよりおそらくSNSでいいね!を獲得することが重要課題なのだ。ファッション・ジャーナリストや編集者に混じってファッション・ブロガーやインフルエンサーの姿が年々多く目に付くようになっている。身近に感じられるオシャレな人の意見のほうが参考になるのだろう。そんな中、大英帝国勲章やレジオン・ドヌール勲章を受勲したファッション・ジャーナリスト、現VOGUEの国際エディター「Suzy Menkes(スージー・メンケス)」が東コレを訪れた。彼女が東コレをどのように見たのかは、とても気になる所。
JFWとしては、海外への発信力をより強めて行きたいとの意思が伺える。それが、「スージー・メンケス」であり「トーキョーファッションアワード」の審査員も努めた「ニック・ウースター」であり、はたまた「Yoshiki」であるのかも知れない。しかしそう容易にグローバル化が出来るとも思えない。なにしろ日本人は英語が苦手だ。今回、東コレを見ていて改めて感じたのは”日本の特殊性”だ。ガラパゴスなどと言ってそれを悪い事と捉える風潮があるが、どうしたって日本はガラパゴス的な進化しかできないんじゃないかといっそう強く感じた。でもそれを逆手に捉えれば、日本独自の強い個性を持っていると言う事だ。特にクリエーションの現場ではその意味は大きい。ファッションブランドでも日本人のアイデンティティに根ざした物作りをするブランドが目に付くようになっている。世界はフラットになり、もう欧米にコンプレックスを感じる時代ではない。北斎や若冲のような日本人ならではの新たな(変態的な)表現をするデザイナーのファッションを、出来ればもっと見てみたい。